夜をすり抜けて
バカみたいな夜の果て

「お前、イジメられてんのか?」


しばらく走った後、不意に樹が訊いた。


一瞬、息が詰まる。


「何…で?」


「鞄投げ入れるとか、やり過ぎだろ」


「ああ」


「それに真琴のお母さん、心配してたから」


やっぱ気づいてたんだ。


「…その落書き」


しっかり見られていた、樹にも――



文面はその都度違うけど、足元に置いてあるわたしの学生鞄の裏面には人に見られたら恥ずかしくてたまらないような言葉が、随時更新されていた。


消しても消してもすぐに書かれる。



「別に…友達がノリで書いただけだよ」


「なら、いいけど」



樹はそれ以上は何も訊かなかった。


ただ真っ直ぐ前を見つめてトラックを走らせる。
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