やわらかな檻
トラワレ
 可愛い可愛い遊び相手。
 頼まれて共に遊ぶ、無知で愚かな慰め役。
 僕の人生に彼女は要らない。


 遊び相手が来るという前触れから三十分が経つ。

 屋敷はざわついていて普段ならば聞こえない物音も聞こえ、静寂を愛する身としてはあまり良い気はしなかった。

 目の前で掃除機をかけられては読書に熱中できず、ならばと別の部屋に避難することも許されず、することもなくソファに腰掛け、働く侍女達の様子を眺めるばかりだ。


 やがて離れが余所行きの顔を見せたのを合図に、縁側から庭に降り、用意された草履をつっかけて門で待っているのだろう遊び相手を迎えに行く。
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