エリートな彼は溺愛を隠さない
瞳を逸らさずに
その時、莉乃が靴をさっと履くと俺に、
「じゃね、夏哉。私行くわ」
と言ってさっさと出て行った。

あの女…。わざとらしい事ばかりして。

俺は恨めしい気持ちで彼女の後ろ姿を見ながら思った。

「綾芽、聞いて?」

彼女に向き直り話を聞いて貰おうと肩を掴む。

「あいつは昔付き合ってた女なんだ。
今日は区切りをつけに来たんだよ」

彼女はゆっくり顔を上げた。

「ごめん、って何?
悪いのは俺だろ?何で綾芽が謝るんだよ」

「……」

彼女は黙り込んでいる。

無理もないわな。
今までの俺のしてきた事が招いた結果だ。

だけど何としても分かってもらう。

俺は綾芽を手離したくはないんだ。



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