秘密
◇第9話◇
◆◆◆




「本日の英雄!佐野茜君と男子バスケ優勝を祝しまして……」


区立体育館近くのファミレス。
以前に座ったボックス席。
赤い軍団。
中央にグラスを掲げた貴司。


「乾杯っ!!」

「「「「「「 カンパ〜イ♪」


貴司に無理矢理打ち上げとして連れてこられたファミレス。


球技大会の後は次々に人が寄って来て、落ち着かなかったから、貴司に引っ張って来られて助かったけど、正直早く帰って休みたいと言うのが本音。


それにしても貴司のやつ…タフだよな…


俺程では無いにしろ、アレだけ走り回ってこのテンション。


さすが合コンキングだな……


それにしても腹減った。
昼はお握り二個だけだったし…


集中力を途切れさせたく無かったから、スタミナを切らさない程度に蛋白質だけ少量。


久々の全力の試合は凄く疲れたけど、頭の中がぼんやりとする適度な気だるさと、心地よい疲労感が身体を包んでいた。


今日はバイトも休みをもらったし、もう少しこいつらに付き合ってやるか。


一人じゃバスケは出来ないし、俺一人で優勝した訳じゃない。


貴司やみんなの協力があったからこその優勝だしな。


「…佐野君?どうしたの?ぼんやりして…疲れた?」


隣に座る奏が俺の顔を覗き込んできた。

俺の為に泣いてくれた瞳が少し赤い。


「少し…疲れたかな?はは…それより腹減り過ぎて…死にそう」

「あれだけ運動したからね…今日もバイトなの?」

「いや、今日は休み」

「…そう、よかった…今日は早く休んでね?」

「うん。そうする、あ。でも髪の色…どうにかしないと、一日限定だし…」

「…赤い髪、似合ってるのに…」

「はは。そうか?でも、もう髪の毛で遊ぶのはやめる、そろそろ落ち着かないとな、来年は受験生だし…」


来年は受験だ。
俺も本格的に将来の事を真剣に考えないとな。


大学へ進学して教育学部へ…



『アメリカに、行ってみないか?』



……うるさい。
出てくんな。


何回追い払っても出てきやがって…


そんな事は…無理なんだから…




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