モラトリアムを抱きしめて
名前

“ハツミ”

それは私と少女が導かれるように出会った事の象徴のような気がした。


「ほんとにほんと?」

驚いて何度も聞く私にハツミは何度も頷いた。

うそ。信じられない。


「……私の名前も“初美”っていうのよ」

そう言うとハツミは、一度驚きはしたものの、それが当たり前かのように嬉しそうにニッコリ笑っている。

それを見た私は「そんなに珍しい名前でもないしな」と、簡単に受け入れようとしてしまう。

私の名前をどこかで知ってふざけて名乗っているとも思えない。

私たちの出会いは、運命なんて安い言葉よりは、必然のような強い言葉が似合う気がした。

何故、出会って数時間でこれほどの感情が生まれたのかはわからない。しかし、名前が同じという事でより親近感を抱いたのは確かだった。


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