海までの距離
約束
カフェから駅までの距離を歩く。
北口の改札前に、海影さんの姿があった。
すらりとした細長い肢体を駅の壁にもたれ掛からせた海影さんは、その小さな顔がすっぽり隠れてしまうほど大きなサングラスをかけていた。
遠目から見ても、どこかオーラがある。
そう思うのは私の贔屓目だろうか。


「ごめんごめん、お待たせ」


ライさんが海影さんに向かって声を飛ばすと、海影さんが私達に気付いてくれて、こちらを見た。


「いんや、今来たばかりだから」


つかつかと私達の方にやってくる海影さん。
1ヶ月、たかだか1ヶ月間が空いただけなのに、“久しぶり”だと感じるのはなぜだろう。


「海影さん、ご無沙汰しています」

「おお、真耶ちゃん。無事に東京に着けたな!」


サングラスの奥、見えないその先で、海影さんが目を細めて笑ってくれた。
そんな気がした。


「ライさんには、すっごくお世話になっちゃって。有意義な大学見学になりました」

「大したことしてないよ。真耶ちゃんがきちんと目的意識があったからこそ、そう感じたんじゃない?」

「そんな…」
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