海までの距離
関係
真っ先に「おめでとう」と言って欲しかった。
その口で、その声で。


『受かったか!?』


電話に出た途端、これだ。
合格発表日を伝えていたとは言え、先走る海影さんの台詞に、私はやっぱりストレートに、


「受かりましたあ!」


そう叫んだのだった。












私には弟しかいない。
兄がいたら、こんな感じなんだろうか。
海影さんに抱く感情は、日を追う毎にますますどの部類に属するのか分からなくなっていた。
海影さんに彼女がいたら、なんとなく嫌だ。
だけど、自分が彼女になりたいとは思わない。
それに、「彼女いるんですか?」なんて聞きにくい。
きっと聞いたら教えてくれるのが海影さん。
それでも、聞かない。














12月に入り、マフラーを新調した。
ヴィヴィアン・ウエストウッドの黒いマフラー。
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