- π PI Ⅱ -【BL】
女郎蜘蛛、現る。



一言で言えば―――『美人』だった。同じ車両に居合わせた男たちの視線が彼女に向いているほど。


歳は…俺と同じぐらいかちょっと上かな。


すらりと背が高く…(ヒールを履いてるから分からないけれど)俺と同じかもしかしたらちょっと女の人の方が高いかもしれない。おまけに抜群のプロポーション。


黒くて長い髪は、前髪と後ろの髪の一房が、粋に鮮やかな銀色に染め上げられている。


その変わった髪形が印象的だったけど、逆にそのちょっと個性的な髪型は彼女に良く合っていた。


フェロモンが出てるってのかな…色っぽくて、それなのに立ち居姿はすっげぇ上品。





その普通じゃないどこかカリスマ的な雰囲気が……周に良く似ていた―――


だから気になった。





女の人と目が会うと、彼女は口の端を妖艶に吊り上げ少しだけ微笑してきた。


わ、わわっ!


慌てて視線を逸らすと、彼女も顔を逸らしたようだ。


そのまま電車に10分ほど揺られて、目的の駅に着くと俺は降りたが、扉が閉まる頃になってふっと気になり電車の方を振り返った。


女の人はさっきと変わらない微笑を浮かべ、


俺に笑いかけていた。



一種ぞっとする何かを感じて、俺は慌てて顔を逸らし―――今度は振り返らずに先を急いだ。



何でかな…


きっと最近誰かに見られてるかも、って意識があるからだ…



電車を降りても、その人の視線にいつまでも追いかけられてるようで



俺はほとんど走るように先を急いだ。





< 10 / 188 >

この作品をシェア

pagetop