Tricksters2ッ
ゼン所長の結婚式
「困ったな。一世一代の晴れ舞台結婚式に、自社ビル爆破されちゃたまんねーな……」
ポツリと呟いたゼンの言葉に、大会議室はパニック状態に陥る。
「爆破っ?」
「なんだって? ゼン所長の結婚式にっ?」
ミエちゃんは、ゼンの首に絡みついたままメソメソと泣いている。
「皆、聞いてくれ」
ゼン所長は、脅迫状を丁寧に折り畳むとジャケットの内ポケットにしまった。
位置的に俺は内容が読み取れたけど、他の人たちは見えなかったはずだ。
ゼンが呟いただけで、パニック状態の会議室がシンと静まった。
「どうやら、我が社を逆恨みしている輩がいるようだ。今朝のアイディアの盗作も奴らの仕業かもしれない。
各部共にデータの漏洩防止、危機管理を徹底して欲しい。不安なことがある社員は、俺が直接話を聞こう」
ゼンが歯をみせてニッと笑うと、会議室の雰囲気がわずかによくなった。
「大丈夫だ。売上が好調な時ほど逆恨みを買いやすい。サイバーテロなんかも、そういう会社が標的になるだろ?
気を引き締めて乗り切ってくれ。
俺の結婚式には、社員一同笑顔で出席できるよう努力する」