ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―
あと4ヶ月

1

 おまえが 失くしたくないものは 一体何なんだ?
 いつか このままでいられなくなる日を思うと
 胸がつぶれてしまいそうになるんだ


ミツは猛スピードで自転車を漕いでいる。
息があがって、左右に振れる自転車を操る。
タイヤがアパートの砂利を踏むと、
ほとんど放り投げるように自転車を降りた。

挑むように、階段同様ペンキの剥がれた赤茶色のポストを見つめ、
仁王立ちになる。
何度も深呼吸をして、ミツはポストのつまみに手を伸ばす。
一度ひっこめてもう一度深呼吸をする。
祈るように一度、天を仰いで恐る恐るポストのつまみをひく。
ギィィと鉄が軋む音がしてポストが開く。

スタジオの空気は重かった。
フラワー・オブ・ライフが週に三度練習をするレンタルスタジオで、
ミツはPVがコンペに落選したという報告をした。

羽月が心配そうな目でミツを見る。
裕太はドラムのイスに座ったままスティックで頬を挟んでいる。

「そう気を落とすな、ミツ。誰だって初めて作ったものは
なかなか評価されないものだよ。」
 サトシくんはアンプに腰をおろして優しく声をかけた。
洋二は突っ立ったままだった。

「なんでかなぁ」
 裕太は不満そうに漏らした。
「おれには最高だって思えたし。」
「そう言うな、裕太。」
 サトシはミツを気づかって、裕太をいさめた。

「おれがまだまだってことだよ。いやあ、奥が深いね。」
 ミツはできるだけ明るく答えた。

「ミツくん、また私、撮って欲しいな。」
 羽月は遠慮がちにミツに声をかけた。

「もちろん!みんなさえ良ければ、これからも撮らせて欲しいよ。
 なんたってカメラ買っちゃったしね。」
「そうだよ!たった一回落ちたくらいでへこめねえよな!」
 裕太は威勢よくバスドラムを踏んだ。

「もう練習しようぜ。時間もったいねーよ。」
 今まで黙っていた洋二が口を開いた。
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