森林浴―或る弟の手記―
九冊目




佐保里姉さんは美しい子供でした。


それはそれは、とても美しく、見る者全てが口を揃えて「美しい」と述べる程でした。


そして、その双子の姉、香保里は酷く不細工でした。


お世辞にも可愛いとも言えない顔立ちをしていました。


それもそのはず、香保里は私の実の姉ではなかったのです。


父の弟は、妻子がある身にも拘わらず、殺人を犯しました。


そして自殺。


その妻もそれを苦に自殺。


その子供が香保里だったのです。


丁度、一週間違いで生まれた香保里を、父は佐保里姉さんの双子として育てました。


勿論、戸籍上は違いますが。


そして香保里は佐保里姉さんを陥れたのです。


美しく出来のよい佐保里姉さん。


醜く、殺人犯の娘である香保里。


香保里がこの事実を知ったのは五歳の時だったそうです。




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