crocus
Welcome to the crocus!

若葉とオーナーさんは一階のリビングに戻っていた。

たった1日で働き口も、住居も確保出来たことは本当にラッキーだった。何よりオーナーさんの気前の良さに頭が上がらない。きっとこれからも。

そんなオーナーさんに、これから少しずつでも貢献したいと、やる気が沸いてくる。

そんな意気揚々とした若葉は正面に並んでいる5人の店員さん達に意識を戻す。

若葉の隣に立つオーナーさんの不器用な悪魔の部分を、他の店員さんも知っているのだろうか、ブツブツと話し声が聞こえた。

例の既成事実手法の被害者が増えた、とか……女子供にも容赦ない鬼畜カーマーだとか……。

若葉が立つ距離でも聞こえているのだ、隣のオーナーさんに聞こえていないはずはない。

ちらりと盗み見すれば、綺麗な横顔は仏様のように穏やかだが、その方が却って何倍も恐怖だった。

「チッ!!!」

にこりと微笑んだままオーナーさんが舌打ちをすると、特に過剰に罵っていた琢磨くんと上田さんが、びくっと肩を跳ねさせ、しばらくの間、沈黙が続いた。

「はい!今日はみんなお疲れ様っ。朝言った通り、この子が新メンバーに加わるから。唯一の女の子で戸惑うかもしれないけど、『仲間』になるんだから。

──認めようが認めまいがね?」

口調が少し低くなるオーナーが気になり見上げれば、その視線は『けいすけ』さんに説いているようだった。

その『けいすけ』さんは、重心を右足に傾け、どうでもよさそうに冷たい目をして床を見ていた。

『けいすけ』さんにとって、若葉が女だということが問題なのか、はたまた若葉自身に問題があるのだろうか。そう考えると『けいすけ』さんとの接し方を今から悩んでしまう。


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