BLack†NOBLE
4.quattro


────陶器のバスタブに浸かり、柑橘系のバスソープで体を流す。

 鏡で怪我を確認すると、右肩は青く腫れ上がり、わき腹は赤い跡が残っていた。


 くそっ……
 好き勝手に傷めつけやがって……

 この肩と顔では、日本に戻ったとしても執事の業務に支障がでる。可能性の低いことを考えても仕方ないな……しばらくは帰れないだろう。





『瑠威様、着替えをお持ちいたしました』


 窓もなければ、排気管に釘が打たれたバスルーム。

 予め逃げ道は、全て塞がれている。



 唯一の出口は、脱衣所のドアのみ。

 俺をあまり信用していない兄は、ライフルをかまえた護衛を二人も用意してくれていた。


『ニナ、タオルをとってくれ』



 先程泣かせたばかりの女が、曇りガラスの扉の向こうでビクッと身を震わせた。

 濃紺のワンピースの裾が、動きを止める。



< 47 / 509 >

この作品をシェア

pagetop