わかれあげまん
ミステリアスボーイ
独りよがりにむかついた柚は、ドタドタと乱暴に足音を立てながらスタッフルームに入り、空いていたスツールにどさっと腰を下ろした。
だいたいさ。
なんでうちの研究所のスタッフバイトなんて見つけるかな。
ここの研究所の卒業生でもないくせに。
年下なのに何かやたら落ち着いてて、変な空気持ってるし。
でも、……
そこまで思って、柚は肩の力を抜いて、どへっと溜息を落とした。
昨日介抱されてる時、すっごく優しかったんだよね。
それに、……頼れる男って感じだった。
「あーあ」
と、ガチャリと開かれたスタッフルームの扉から再び顔を覗かせた高戸所長が、申し訳なさそうに柚に言った。
「星崎ちゃーん。再三悪いんだけどさ、午後からの事務の女の子まだ来ないんで、コーヒー淹れてくれない?」
苦笑しウインクして、顔の前で掌を合わせる所長に。
「あ。は、はい、分かりましたァ」
あんなやつのためにコーヒーなんて淹れたくないけど、所長の頼みだからしょうがないよね。
と、柚はニコリと返し、重たい腰をあげた。