会いたい
我慢する

 その日の夜に、携帯に電話がかかってきた。母からだった。

「何? 明日も早いから、寝たいんだけど」

 今月の母の声は、私にとってあまりありがたくない。
 いつも気まずい余韻しか残さないから、私はわざと不機嫌そうに言った。

『今度の日曜日、予定はあるのかい』

「? 別に、ないけど、何なの?」

『お見合いが、決まったんだよ。今度の日曜、十一時から、駅前のホテルで』

 一瞬、頭の中がからっぽになった。

< 31 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop