BLack†NOBLE
6.sei

────体勢を立て直し銃を両手で掴む。



 鉛の重さが、痛む肩にくる……久しぶりに握ったホンモノに、心臓が早鐘を打つ。

 沈まれ……相手はマフィアだ。


 俺は、蔵人に銃口を向けた。




『クロード様っ!』

『いいよ。レイジ……下がってろ……ただの兄弟喧嘩だ』


 掟に従い身を呈して、蔵人を守ろうとするレイジを片手で征する蔵人。両手をゆっくりと上げて苦笑した。



『降参だ。瑠威の茉莉果に対する想いと、俺を恨んでることはよくわかったよ』


『兄弟喧嘩で死ぬマフィアは珍しくないのか? 蔵人』


『悲しいくらい、よくある事件だ。殺した方がファミリーの頂点にたつ』




 引き金に指をかけて蔵人を睨みつけた。


 コイツを殺したなら……俺が頂点……


 そんな話、心底どうでもいい。


 ここからの逃げ道を考えよう……

『レイジ、屋敷にいる彼女に危害を加えないと約束しろ。蔵人を撃ち殺すぞ』



 護衛がライフルをかまえた。冷や汗が出た。それを悟られないように、目を細めた。



『瑠威様……浅はかな真似はお止めください』



『約束しろ! 俺は本気だ』


 蔵人を撃てば、俺も彼女も殺される。だけど、この手段しか思い浮かばない。
 

 マフィアは、ファミリーの絆をとても大切にする。ボスを殺された構成員は、一斉に俺たちに牙を剥く。


『約束します。銃を下ろしてください!』


 腕を下ろした俺に、蔵人は「賢いな」と皮肉な事を言った。



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