トツキトオカ
はみだし③マタニティビクスの効果
正直、初めは乗り気とは言えずに通っていたマタニティビクス。

フリーパスを買ったからには1日でも多く通った方がいいと自分に言い聞かせてはいるものの、朝からうだるような暑さが続いた7、8、9月。

まず化粧をして着替えて外に出るまでの勇気と覚悟が必要になる。

必ず1回は「今日はいいかな~」と悪魔の囁きが聞こえ、それをえいと振り切ってようやく身じたくを整える。

家の外に出ると容赦なく照りつける直射日光。

近所のじいさんに「こんな暑い中出かけたら体に毒だよ」なんて声を掛けられながら駅まで歩くのだ。

特にダルマになってからはふーっ、ふーっとまるでラマーズ法の様な呼吸をしながらえいさ、ほいさと歩き続ける。

そしてスタジオまでの「魔の階段」を上がり、ようやく到着。

すでに息は上がり汗もダラダラである。

ここまで来るのはえらいこっちゃだが、レッスンが始まってしまえばこれがまたなかなか楽しい。

私は運動は嫌いだがダンス類は割と好きなのだ。

音楽に合わせてステップを踏んでいるとあっという間に1時間過ぎる。

初めは人見知りを貫いていた私だったが、しばらく通っているうちに何人か友達も出来た。

そしてビクスを終えた帰り道はびっくりする位爽快だ。

電車の中でも自ら空席を探し求めること無く、入口付近に立って窓の外なんて眺めてしまう。

親切に譲ってくれる人がいるといえいえ大丈夫、今運動してきた所ですからなんて言いたくなるくらい体がすっきりしている。

この「気分爽快」感はマタニティビクスの効果のひとつなんだとしみじみ思った。

そしてある日、鼠径ヘルニアの痛みが無くなっていることに気がついた。

そう言えば最近痛くないなあと思って確認してみたが、あの膨らみも無い。

出産すれば治ると言われていたヘルニアが、出産前に治った。

「鼠径ヘルニアが治ったっぽい!」

興奮気味に喜ぶ私に夫は言った。

「ビクス効果じゃない?」

言われてみればそうかもしれない。

それにしても、立っているのも辛かった鼠径ヘルニアの痛みが無くなったのは本当に嬉しい。

それだけでも暑い中頑張って通った甲斐があったってもんである。

さすが院長、あれだけビクスを推奨するだけのことはあるねえと偉そうに夫と盛り上がった。


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