契約の婚約者
8.それぞれの旅立ち


6月のある晴れた日----


沙希と片桐は会社を半日休み、成田空港へと来ていた。


奈央とその婚約者(一応)黒沢修一がニューヨークへ発つ日。


e-チケット制になり、チェックインがスムーズになったとはいえ、チェックインカウンターは大勢の人で賑わっていた。


「ごめんね、待たせて」


「本当に!私人ごみ嫌い……」


今から友の旅立ちを見送ろうというのに、沙希は相変わらず悪態をつく。


「だからごめんって。沙希も片桐さんもわざわざ見送りよかったのに……」


「人ごみが嫌でも見送りぐらいちゃんとするわよ。それに仕事サボれるし♪」


「沙希、仕事サボりたいから見送ってくれるの?」


奈央が恨めしそうに沙希を見つめた。こんな時くらい優しい言葉をかけてよ、とブツブツ文句を言っている。



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