死が二人を分かつまで


居間の畳の上に、古ぼけたグローブ二つとボールが一つ、置いてある。


その傍らに幼いさとしは落ち着かない様子で座り込んでいた。


仕事から帰ってきた広は、それを一目見るなり露骨に顔をしかめる。


「何だそれは」

「納戸を整理したら出てきたんです。あなたが子どもの頃使ってたやつでしょう?」


夕飯の支度をしていた知子は、夫の出迎えのために笑顔を浮かべつつ台所から出てきた。


「そんなもの出して来てどうするつもりだ。俺はキャッチボールなんかやらないぞ。仕事帰りで疲れてるんだからな」


不機嫌そうに言い残し、広はそのまま寝室へと向かってしまう。


知子は慌てて彼の後を追った。


居間の隣の和室から、祖父母である大助と千代はそのやりとりを見ていたが、何も言わず、ただ気まずそうに座っている。


グローブとボールを手に立ち上がり、玄関に向かおうとするさとしに気付き、千代が声をかけてきた。
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