死が二人を分かつまで
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知子のつくる料理は、とてもおいしい。
さとしにとって、一家揃っての食事というのは緊張する時間ではあったけれど、彼女の料理が口にできる瞬間はとても幸せで、辛い気分も相殺された。
ある日の夕飯の席で、知子がニコニコしながら話を切り出した。
「あなた。今日三者面談だったんですけど、さとしちゃんすごいんですよ。たいていの大学は合格圏内ですって」
言いながら、知子は担任教師から渡されたプリントを広に渡す。
「そりゃそうだろう。早いうちから良い塾を見つけて通わせてやったんだからな」
広はフンと鼻を鳴らした。
しかし、表情を見る限り、機嫌は悪くなさそうだ。
「まぁ、大学に行くからにはそれなりに名の通った所じゃないとな。早稲田か慶応か……」
「さとしちゃんはどこに行きたいの?」
知子は夫の言葉を遮るようにさとしに問い掛けた。
「あの……」
さとしは箸を置き、改めて姿勢を正し、二人に向き合う。
「特別極めたい分野もないですし、進学する必要はないかと思っているんです。それよりも早く就職して……」
「何を言ってるんだ!」
途端に広の機嫌が悪くなった。