悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 2~
一章

1.出会いの記憶




5月初旬。

窓から忍び込む夜気に蜜柑の花の甘い香りが混ざり始める季節。

灯里はベッドの上で微睡みながら、懐かしい記憶を思い出していた。



あれは中学一年の時。

5月のGWが終わってすぐの土曜日。


灯里はフルートを脇に抱え、中学校の体育館に入った。

灯里はその頃吹奏楽部に所属しており、初心者ということもあって毎日フルートの練習に明け暮れていた。

その日は市内の他中学校との合同練習ということで、体育館にはいつもより多くの椅子が並べられ、灯里はフルートを手に指定された椅子に座った。

椅子は楽器ごと・学年ごとにグループ分けされており、灯里が座ったのは木管楽器チームの一年の椅子だ。

――――今日来る中学校の吹奏楽部はかなりレベルが高いらしい。

と昨日友人から聞いていた灯里は、期待半分不安半分といった気持ちで彼らが来るのを待っていた。


そして数分後。

入り口の方からガヤガヤと声がし、ブレザー姿の学生たちが姿を現した。

灯里は背筋を伸ばし、どきどきしながら彼らが来るのを待っていた。

灯里は木管楽器チームの端の席に座っており、隣の席や前の席は空いている。

隣に来るのが女の子だったらお友達になれるかもしれない。

などと思っていた灯里だったが、座ったのはクラリネットを手にした少年だった。


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