死が二人を分かつまで
旅立ち
「何を馬鹿な事を言ってるんだ!」
さとしの伯父、広は顔を真っ赤にしながら激怒した。
ある程度覚悟はしていたが、これはなかなか手強そうだぞ、と津田は思う。
「進路について相談があるというからわざわざ時間を割いてやったのに、そんなくだらん内容だったとは!」
どうやらさとしは詳細を告げずに伯父との約束を取り付けたようだ。
しかし、津田はさとしを責める気にはなれなかった。
この伯父との話し合いを決心しただけでも、相当の勇気を必要とした事だろう。
「大学まで行かせてやったのに、結局そんなくだらんものになるつもりか!?」
「いや、小谷さん」
それまで静観していた津田は、二人の会話に割って入った。
「お言葉ですが、『芸能人』というのは立派な職業の一つです。自分の才能を武器にその地位を高めて行く、高尚な仕事です。努力家で、頭の回転が速い者でなければ務まりません」
しかし広は津田を一瞥しただけで、それに対する返答はせずに、さとしに向かって続けた。
「結局、あいつと同じ道を選ぶんだな」
さとしはずっと俯いている。