Line【密フェチ】
Line

――その触れ方には悪意があった。


少なくとも僕はそう感じた。


「何ですか?」


意図を測り兼ねて、思わず尋ねる。


「ゴミ」


「?」


「ゴミ、ついてた」


いつもと変わらない冷めた表情。


淡々とした受け答え。


彼女の不敵とも言えるその態度に、僕は一層戸惑いを覚える。


「ゴミ、ですか……」


腑に落ちない様子の僕を一瞥し、去ろうとする。


「あ、あの!」


思わず引き止めてしまった。


僕に向き直る彼女。


言葉を探しながら、口を開く。


「なんで、あんな……」


触り方――。


辿るような。這うような。


ゴミを取るような手つきじゃない。


違う意味があるとしか思えない。


「本当は……」


話す事を躊躇っていた僕をじっと見つめながら、彼女は呟く。


「直接触りたい」


「えっ!?」


言うや否や。


2人の距離をすかさず詰め、上目使いで僕の顔色を窺う。


今の発言でただでさえ落ち着かないのに。


この状況はさらにその気持ちを煽る。


必要以上に近づいた体。


発せられる甘い匂い。


挑発的な瞳。


扇情的な唇。


誰もいないオフィスでこれは……。


危険な感情を誘発する。


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