ルージュはキスのあとで
女子力UP?


18  女子力UP?



「なによ。結構仲良くやってそうじゃない」

「……まぁ……ね」



 少しだけバツが悪くなって、彩乃からの視線から逃れるようにそっぽを向いた。

 ここは、会社近くのファーストフード店。

 客層は、高校生や大学生が多くて店内も騒がしい。
 しかし、こういうところなら会社の人間はあんまり出入りしないので、込み入った話をするのには丁度いい。

 バニラシェイクをズズッと吸い込み、その甘さに至福のひとときを感じる。



「よかったわ。心配して損した!」

「……」



 今日発売になった『Princesa』を開いて、ニヤニヤと笑う彩乃。

 確かにさ、やる前はかなり渋ったし、やめる気マンマンだったけどさ……。

 そこまで私を責めなくたっていいじゃないのよ、彩乃。
 元はといえば、私の気持ちを考えずOKサインを出してしまった彩乃が元凶だというのに。

 チラリと彩乃に視線を向ければ、今だにニヤニヤと笑っている。



「な、な、なによ?」



 バニラシェイクのストローを弄びながら彩乃に声をかける。



「いーや。いい傾向だと思って」

「いい傾向?」



 どういうことだろうと首を傾げてみれば、彩乃は私を指差して満足そうに頷いた。



「そうよ。真美、気がついている?」

「へ?」

「更衣室にいる時間が長くなったの」

「え!?」

「それに、ほら!」



 そういって再び私を指差す彩乃。

 彩乃が指したのは、私が手にしている本だ。
 これは、先日長谷部さんに借りたもの。



「これ読んで復習しておくように。サボれば……わかっているな?」



 と、なぜか脅されたのだ。
 あの威圧的な雰囲気で言われると、こちらとしても逆らえない。



「真美の愛読書を開く率も減ったんだよね」

「……そう……かもしれない」



 いつもなら鞄に一冊は忍ばせておく文庫本が、ここのところ長谷部さんに借りたメイクの本に入れ替わっている。

 彩乃といても、ファッション雑誌を見る機会も以前よりかなり増えたように思う。





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