愛を教えて ―背徳の秘書―
(12)幾つもの嘘
『なるほど。それは災難だったな。中澤くんには、ゆっくり休むように伝えてくれ』

「……はい」


宗は終わるなりかかって来た卓巳からの電話に、必死で応対していた。


連絡が取れなかったため、伝言を残して会社を出たのだが……。

GWまであと数日、連日の残業に今日は直帰すると予め了解は取ってある。


だが、どうも卓巳の口調が変だ。


『これは確認だが、中澤の部屋でズボンのベルトを外すような真似はしてないな』

「それは……トイレは借りましたが」

『……まあいい。家のほうに来てくれ。ただし、胸に手を当てて、日頃の行いを自問自答してから来い。自らの良心に恥じる行いをしていなければ、とくに問題はない』


良心に恥じる行いをしたばかりの身としては、なんとも答えようがない。

かろうじて……常時携帯している避妊具を装着する理性だけはあった。女の安全日ほど危険な日はなく、女の用意した物は使う気にはならない。

卓巳からの電話を切ると、口にしたとおり、トイレの水を流して宗は表に出た。


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