ビロードの口づけ
11.疑惑の真相
 しばらく席を外していたジンが、ライと一緒に戻ってきた。
 そしてすぐに兄とライは、クルミとジンに挨拶をして帰って行った。
 二人とも相変わらず忙しいようだ。

 クルミはそのまま午前中をリビングで過ごし、昼食後も居座った。
 今日は午後から立て続けに二人の家庭教師がやって来る。

 学習の時間になり、クルミは自室に戻ってジンと別れた。
 一人目の教師が帰った後、モモカがやって来た。

 二人目の教師が急病のため来られなくなったらしい。
 突然ぽっかりと時間が空いてしまった。

 ジンはいつも午後の学習の時間に遅れて昼食を摂り、そのまま休憩に入る。
 今はまだ眠っているかもしれない。

 モモカが呼びに行こうとしたが、クルミは引き止めた。
 ジンはいつも午前と午後の二回に分けて細切れに眠っている。

 今日はせっかくまとめて眠れるのだから休ませてあげたかった。
 それに彼と二人きりになる時間はなるべく減らしたい。

 以前行方をくらました事があるのでモモカは難色を示したが、クルミが自室ではなく人の出入りがあるリビングにいる事を約束すると、渋々ながら了承した。

 クルミは刺しかけの刺繍を持ってリビングに移動する。
 ソファに座り刺繍を刺していると、時々モモカがお茶を運んできたり様子を見に来たりした。
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