ビロードの口づけ
エピローグ
 降り注ぐ木漏れ日を見上げて、クルミは眩しさに目を細めた。
 庭に出るのは何年ぶりだろう。
 父の許しが出たので、クルミは翌日庭に出た。

 約束の日のやり取りが終了した後、ジンは一旦森へ帰った。
 後日改めてクルミを迎えに来るという。

 ライは兄に請われて秘書に戻る事になったらしい。
 ライが辞めた後、なかなか後任が見つからず、席が空いたままになっていたからだ。
 獣だと分かっても、ライの才能を兄は認めているのだろう。

 ジンがいつ来るのかは聞いていない。
 しばらく家にいるなら、やはり予定通り庭で花を育ててみたいと思った。

 いつもは窓越しに眺めるだけだった庭を歩きながら眺める。
 視線の先で花壇に水をやっているコウを見つけた。

 側まで行くと、彼は笑いながら声をかけてきた。


「クルミ様、お散歩ですか?」
「うん」


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