真紅の世界
再びの新しい世界



ぎゅっと瞑った目を開くと、そこはさっきまでいた薄暗い地下室じゃなかった。


澄んだ青空。
白い雲。
どこまでも続きそうな緑の草原と、色とりどりの花たち。
生い茂る大きな木に、そこに住んでいる鳥たちの綺麗な声。




「こちら世界へようこそ、サラ」


地下室にいたときと同じように、私を抱きしめながらユリウスが言った。
その言葉でここが魔界なのだと知る。


……魔界っていうから、てっきり陽の光のない暗い世界を思い描いていた私は、いい意味で期待を裏切られた。


目を見開いて固まる私を不思議に思ったユリウスに、私の想像していた魔界像を伝えると、



「そんな暗い世界じゃ生きていくのにも暗い気持ちになるだろうが」



と何とも納得する答えが返ってきた。


確かに。毎日寝ても覚めても真っ暗な世界じゃ、いくら幸せだったとしてもなんか微妙な気持ちになるかもしれない。


うんうん、と納得する私の頭をぐしゃぐしゃと撫でまわしたユリウスは、


「大丈夫だ、サラ。 お前が望むなら、あちらの世界の歪みだって俺は直すぞ?」


その言葉は、私の涙を呆気なく呼び出してしまう。

ユリウスの瞳はどこまでも優しかった。
あちらの世界を逃げ出した私の負い目さえ払拭してしまうほど。
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