呪われ暗殺ガール
メシマズデイズ
嗚呼、今日も飯がマズい。

両手足を拘束され自力で食事出来ない私の為に謎の美女が不気味な色のお粥を掬って食べさせてくれているこの状況。
何のプレイだと毎回思うが、まあでもそんな事はこの数日間でまだ許容出来る範囲になった。慣れとはかくも恐ろしき哉。
――それよりも問題は食べさせられているモノの方にあった。

「うえぇぇ…苦い渋いマズいもうこれ無理です食べられません勘弁して」
「黙って全部食べきって下さい」
無表情な美女のハスキーな声が室内に響く。
これで私が男だったらむしろご褒美です!ありがとう御座います!となったのだろうか…なんて、至極どうでもいい事を考えながら私は先程から現実逃避してばかりだ。

――だってマズいんだよコレ!
何だかもうこの世にある不味いもの全てぶち込みました的な破壊力抜群の味!
お粥好きだけどコレばかりは本当に無理です…毎回食べる度に心なしか身体中バチバチ痛くなるし!
もう何なんですかねこれ遠回しに死ねと言われているとしか……ああ、すみませんちゃんと食べますからゴミ虫見るような目でこちらを見下ろさないで下さいお姉様。

「対象、差し出した食事を拒否。侍従長の指示に従う意思なし…」
「わーーー美味しく頂きます残りも下さいお願いします!」
いつも所持している謎の帳面にメモを取ろうとする美女を何とか止める。
分かれば良いのだ面倒かけるなと言わんばかりの視線を浴びながら、私は再び地獄に身を投げた。

――王都に来て半年。
これまでもろくな扱い受けてなかったけどここ数日に比べると無視陰口嫌がらせなんてまだ可愛いものだったんだなと思った拘束三日目の夜であった。


<完>
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