エゴイスト・マージ
花火


「花火?」



「そうそう」

「何ソレ?」

「え?知らない?夜に……イタッ」

急に耳を引っ張られて
冷ややかな目で見られた

「そんな事は知ってるって事ですね
スミマセン」

もう~~耳引っ張らなくっていいのに
結構痛かった

「何でお前と俺が?」

「恋人(ごっこ)なら
こういうイベントには行かないと」

「はぁ?何?強制?」

すっごく嫌そうに顔をしかめる
その表情ヘコからやめて欲しいんですけど

「チガイマス……行きたいんです」

「やめとく。興味が湧かない」

でしょーね

「誰かテキトーに行けばいいだろう」


先生と!一緒に行きたいの!
どうして分からないの?
こ~~~のバカ!!!!!!!!!!

とはやっぱり言えなくて

「ゲーム中でしょう?
それとも放棄するんですか
先生としてそれはどうかと
思うんですけど……」

チクリチクリと責める

やりすぎると

”じゃ降りる”とか平気で
言われそうなので駆け引きは
慎重にやらなければならない


「先生として……?」

「うん。生徒の期待を
裏切るのはどうかと」

「………………」

「………………」

この無言の時間がキツイんですけど


先生を横目で見ると
何か考えてるようにも見える


「そうだな……」

うんうん

「やっぱり、パス」


全然、溜めて言う事じゃないじゃん




玉砕するとは思ってたけど
こうもアッサリだと……



「あの、スミマセン三塚先生」


「はい。どうされましたか?」


当の先生は私を素通りし
ドアの前に現れた1年担当の
女性教師に態度を一変、
ニコニコ対応していた


(そういう態度が誤解を招くのに)

イラッとしつつ、立っていると

その教師はチラチラと私を見ながら

「あ。何か生徒さんと
話されてるようなら
後で良いですけど……」

「いえ。質問に来られていたんですが
もう帰るとのことなんで
構いませんよ」


帰るとか言ってないのに

もうもう先生なんて

先生なんて……


もう……


「じゃ帰ります。先生も
あまりご無理なさらないように」

虚しく通じもしないだろう
嫌味を口にし
ペコリと頭を下げて教室を出た



アレはいつものパターンだ

多分あの女性教師は三塚先生のこと

で、おそらく先生は応じるんだろうな

断ってる所見たことないし


ついこの間の文化祭の時、
なまじ劇とかに頼み込まれて
出ていた所為で
先生が出番の度に会場に黄色い
悲鳴とか聞こえて殆どセリフも
聞こえなかった

その後、生徒の姉とか母親とかに
囲まれてて、その後も無断侵入禁止の
学校に勝手に入ってきては先生に
話しかけてる女の人を結構見かけた

やっとそんな騒ぎも一段落着いたと
思っていたのに

< 27 / 80 >

この作品をシェア

pagetop