執事ちゃんの恋
第6話


 第6話



「コウ様。どうぞ、お手を」

「ええ」


 コウが通う有名女学館高校のロータリーに車を止めてドアを開けた。


 初めて来た女学館高校は、お嬢様学校といわれるだけあって、あちこちに高級車を見かける。

 チラリと見ただけで、有名な会社の子女と思われる人物が何人も見受けられた。


 さすがは女学館高校だ。


 しかし、とヒヨリは少しだけ違和感を覚えた。

 自分が外に出て扉を開けようとしただけだというのに注目を浴びているようなのだ。

 確かに車の中にいるコウは、名門中の名門の生まれであるし、この容姿だ。

 女ばかりの園だといっても、憧れなどを抱いてる者も少なからずいることだろう。

 良くも悪くも注目されるであろう生まれのコウだ。

 女学館でもきっと注目の的なのであろう。


 あまりにざわつくため、コウの手を取ったあと辺りを見渡し、挨拶の意味も込めて笑みを浮かべた瞬間だった。

 キャーという黄色い声があちこちから聞こえたのだ。

 いったい、これはどういうことなのだろうか。

 首を傾げているヒヨリを見て、コウは大きくため息をついて呟いた。



「……失敗だったわ」



 気難しい顔をしたままのコウ。
 どうしたのだろうか、とヒヨリが首を傾げると、ますます表情を険しくした。

 ヒヨリとしてはどうして突然コウが機嫌を悪くしたのか、皆目見当がつかない。

しかし、とにかくコウを学園の中に促さなければならない。

 学園の玄関までコウを送ろうとしたのだが、コウはヒヨリが手にしていた鞄をひったくるように取った。





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