ジルとの対話
Chord C

夜の帳が空を覆い、ちらちらと篝火が燃える黒に、月明かりが青ざめる。
音楽室の窓から忍び込むと、グランドピアノを照らし、月の光が壁に打ちついては夜空に煌めいた。

そこへエレクトリックギターの刃が部屋を貫いた。
グランドピアノの主は部屋を、飛び出し 事件の場所へ走り寄った。
地下室を開けると、見ず知らずの男がエレクトリックギターを弾いている。ジルは驚きながら、彼に話しかけたが、聞こえていなかったようで、肩を叩いた。
「ビックリした。」
男は呟くとギターを置き、咳払いをしながら身なりを整えた。
「明日、ちょっとギターを弾くようがあって、住んでるフラット(アパート)では苦情がきて、電気が通ってなくても良いんだが、エフェクターの具合と、ホールの相性が良いか、ヘッドフォンじゃいやで、ここ電気が通ってたから、なのに、電気もついてなかったから、ちょっと借りた。」
と、ロックギタリストはジルに説明した。どんな言い訳をしても、無駄だと思っていて、どんな制裁でも引き受けようという姿勢であった。
「いや構わないですよ。どうぞ、お名前はなんです。」
ジルが丁寧に尋ねる。
「キースだ。」
「僕はジル。どうか、お話を聞かせてください。」
キースはあぁと言って、ジルの案内するままに後を付いて行った。
「僕たちは、あなたを探していたんですよ。あなたは、僕の逆位置なのです。」
ジルがそう言ったが、キースは言葉が
理解出来ずに黙りこんだ。
「逆位置?」
漸くキースが、口に出すと、2人は屋敷の食堂に着いていた。
「キース、僕たちはふたごなんだ。ベルリオーズと一緒に僕は君を探していた。生命の神秘が君をここへ呼んだ。タロットカードは正位置と逆位置があって、光と影をあらわしていることが殆どだ。僕は1人で光を見つめていた。影を探し、完璧に近づけるかのように、ここのものは逆位置をいつも探している。」
ジルが説明しても、キースは理解しなかった。下らないピエロのもてなしなのだと聞き流した。
ジルはキッチンに入ると、珈琲になんの断りもなく砂糖を入れた。
「それをこっちに持って来くるつもりか。」
低い声でキースが訪ねるので、ジルはもう1つ珈琲を作って持ってきた。
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