やわらかな夜
3―“それ”を思った日
いつものように情事を過ごした夜のことだった。

「はい」

「何それ?」

あかりが俺に差し出したのは、メモの切れ端だった。

俺は仕方なく受け取ると、中を見た。

どこかの店の名前とそれらしき地図だった。

「何だ、ここ?」

地図を指差して聞いた俺に、
「行ってくれたら教えてあげる」

あかりは笑いながら答えた。


『今日のお昼休み、大丈夫そう?』

有村からそんなメールがきたのは、翌朝のことだった。

大丈夫だと返事すると、彼女は待ち合わせ場所に会社から少し離れた喫茶店を指定してきたのだった。
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