結婚白書Ⅰ 【違反切符】
高志の決断


その日は 珍しく親父の方から話しかけてきた。



「おまえ 相手のお嬢さんを気に入ってるのか?」



親父もお袋から散々言われたらしく やむなく俺に聞いたようだ。



「気に入ったのかと言われれば そうだけど・・・

だから 今すぐに結婚ってのもなぁ まだ お互い知らないことも多いよ」



これが本心

俺たちはまだ出会ったばかりだ

曖昧な気持ちで結婚なんかしたら相手にも失礼だよ


結論を出したくなくて あれこれ考えをめぐらす。

なんでそんなに結論を急ぐんだ。




「高志 おまえ大事な事をわかってないようだな

見合いをするって事は 結婚が前提なんだぞ」



そういわれても 決められないものは決められない。

親父の言葉には返事をせず家をでた。





今日は 会社の連中への土産を買うために繁華街に出掛ける。

彼女も付き合ってくれるそうだ。

結局これで5日間一緒に過ごすことになる。



運転しながら 親父の言葉が引っかかって モヤモヤしてる。

ゲリラ見合いに抵抗して 何が何でも断るつもりだった。

だけど いざ対面したら案外良い子で すぐに断る気も薄らいだ。


見合いを受けたってコトは結婚を前提か 言われてみればそうだよな。



結婚かぁ・・・


ここにきて 急に現実味を帯びてきた。

そういえば 彼女は俺の事をどう思ってるんだろう

嫌いじゃないから毎日付き合ってくれるんだよな

じゃあ 俺のどこを気に入ってくれたのかなぁ


思わずニヤニヤしている自分に気づく。

急に恥ずかしくなりオーディオの音量を上げ アクセルを踏み込んだ。



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