お姫様の作り方
自由になれないはずがない
* * *


退屈で退屈で仕方がない。
私にペコペコと頭を下げるバカな大人たちにももう飽きた。


どうしてそんな風に笑うの?何も面白くないくせに。
上っ面だけ良くして私の傍に寄って来るのは、私の背後にある金と権力にこびへつらうためだと分かっていないとでも思ってるの?
だったら訂正してあげるわ。私は全て分かってるのよ。


―――この世はつまらない。
私が生まれたこともつまらないのだから、私が見る風景だってつまらないはずだ。


「虎南茉莉花(コナンマリカ)様、ようこそ。」

「お招きいただき光栄です。」


今日のドレスの色にはアクアマリンをチョイスした。
黒くて長い髪はアップにしてまとめてもらった。ついでにメイクまで施されたこの顔は完璧に、虎南グループ代表取締役令嬢、〝虎南茉莉花〟のものである。
対取引関係者への笑顔はもう幼少期から叩きこまれている。だから条件反射のように当たり障りのない〝笑顔〟になる。


「茉莉花様!」

「虎南様!」


…もう、いらない。もういらないんだ、本当に。
そんな風に呼ばれる自分があまりにも空虚だ。
自由なんてもの、…味わったことが無い。


「茉莉花様?」

「…ごめんなさい、私少し人混みに酔ったようです。少し夜風に当たってきます。」

「私たちもご一緒しますわ!」

「いいえ。皆様は楽しんでらして。少し休んだら戻りますね。」


にっこりと笑うことは忘れない。相手がそんなに私に対して関心がないと分かっていても、だ。

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