カプチーノ·カシス
マシュマロ·モカ


本社のビルと工場の建物は別ではあるけれど、敷地はつながっている。

その二つの建物のちょうど中間にある緑色のテントに、私は足を踏み入れた。


「……暗っ」


大きなテントの中は所狭しと段ボールや包材のフィルムが積まれていて、昼間だというのに薄暗い。ここにある資材は、生産が終了した古い商品のパッケージや傷んだ段ボール。

工場の人が立ち入ることもほとんどなく、だからハルはここを選んだんだろう。



「――よお、逃げなかったか」



背後からかけられた声に思わず肩が震えた。

だけど……あたしには言うべきことがある。

あたしは深呼吸をして、心を落ち着かせる。そしてゆっくり振り向いて視線を上げたあたしは、テントの入り口に佇んで妖しげな笑みを浮かべるハルを、まっすぐに見つめた。

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