久遠の花〜 the story of blood~
/3
/3


 夢で見たそれは、過去の出来事。

 けれど、〝私〟はそれを覚えていない。

 ――いや。正確には覚えているけど、その時の私は、まだ本当の〝私〟じゃない。

 あやふやな記憶しか所持せず、本来の目的も果たせない【普通の人間】。





 このままが幸せだとわかってる。

 騒がない方がいいとわかってる。





 この身に宿る血が、力が。

 今、時を迎えようとしている。

 たとえそれが早いことだとしても――これは、必要なことだから。





 私は――〝私〟に終わりを告げる。





 ―――――――――…
 ――――――…
 ―――…





 ――虚無。





 暗くて果てしない。けれど、閉鎖的な冷たい空間。

 ゆらゆらと漂う体。どこへ向かうわけでもなく、ただ、流れる葉のように身を任せているだけの世界。





 ここは……どこ、だろう。





 考えついても、自ら動くという行動はとれなくて――。どこまでも、どこまでも。流れるだけの世界。





 ?――――止まっ、た?





 どれぐらい漂ったのか。静かに、体が停止する感覚がした。

 周りを見ても、なにかあるわけじゃない。ぶつかって止まったというわけではなく、その場に停止している、という表現以外、適切な言葉が思いつかない。
< 199 / 526 >

この作品をシェア

pagetop