玄太、故郷へ帰る



夕方。
一階では、父と母の言い合う声が響いていた。

二階に上がったきり、一階にはほとんど降りてはいかない玄太と彼女。
……それから私。

母だけが一人、父に責められている。


明日の晩御飯は鍋にしようかなんて、昨日の夜は母とそう話していたのに。
鍋だなんて、家族で食卓を囲むだなんて、全くそれ所ではないみたいだ。


雪かきから戻った父はそのまま部屋に籠ってふて寝をし、時々何かと母を怒鳴り付けていた。
母は逃げる様に近所のスーパーへと買い物へ行き、安い弁当を買って帰って来た。


『美香恵、これ、あの子たちにも、一個づつね』

そう言って母は、私の部屋へと弁当を3つ運んで来たけれども、その顔にはもうすっかり疲れの色が見えていた。

私は嫌だとは言えず、任せておいとばかりに笑顔を見せたけれども、心中は私だってあの二人と顔を合わせるのは嫌だった。

特に弥生ちゃんには、私にはやはり強い苦手意識がある。

それなので机の上に弁当を3つ積んだまま、私は冷えてしまって置きっぱなしだったコーヒーを仕方なしに啜っていた。



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