玄太、故郷へ帰る



次の日の朝、目が覚めると、


ザッザッザッ
カツッ……
ザッザッザッ


外では、昨日よりもずっと静かな雪かきの音が、響いている。

寝ぼけた頭で、よく耳を澄ませてみると、


ザッザッザッ
ザッザッザッ……


その音は、二つ重なっている様だ。


ああ、そうだ。
玄太が来ているんだった。

私はするりと布団から抜け出し、凍える様な寒さの中で手早く着替えだけを済ませた。


父と玄太が一緒に雪かきをしている。
いったい何年ぶりだろう。
揉め事は起きてないだろうか?

少し慌てて一階へ降りると、廊下にはすでに味噌汁のいい香りが漂っていた。


「おはよう、美香恵。ほら、さっさと先に食べちゃいなさい。仕事、遅れちゃうわよ」


キッチンには、そう言って私を急かす母と……


「おはよう、ございまあす」


お味噌汁とご飯を運ぶ、お腹の大きい弥生ちゃんの姿。


「弥生さんね、早起きなのよ。お家が植木屋さんなんですって。朝がね、早いらしいのよ」


そう言って味噌汁を注ぐ母の後ろ姿は、何だか機嫌がよさそうだ。



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