青い星〜Blue Star〜
文久三年 其ノ弐

Dr.奏の熱血指導






        ***




〈Dr.奏の熱血指導①ー食事ー〉




「総司………」



「うるせぇ。黙って食え。」




と言いつつ仏頂面でほとんど噛まずに飲み込むように食べている。
昨日の夕餉はまだ運が良かったらしい。

朝一番、並べられた膳に奏は驚愕した。


奏自身、食事を作ってもらった分際で文句を言う筋合いはないのは重々承知している。


が、これはあまりにも酷すぎる。

箸に手をつけようとしない奏に見かねて総司は「すまない。」と謝った。




「食事を作るのは当番制なんだ。作り慣れていない奴もいる。」



「………ちなみにこれは何だ?」



奏が指差したのは原型をとどめていない黒い物体。




「魚だったものだ。」



「これは?」




次に指差したのは水を大量に含んだ緑黄色野菜。




「ホウレン草のおひたしだ。」



「これはお粥かい?」




次に指差したのはべちょべちょになった白米。




「いや、お粥を作る気はなかっただろう。」



「これは?」




最後の一品、吸い物もどき。




「味噌汁だ。」



「味噌汁はいつから透明になった。」



「飲んでみろ。味が少々薄いだけで味噌らしき味はする。」




酷い。

あまりにも酷すぎる。

見ると皆難しそうな顔をしながら黙々と食べていた。

永倉と原田が申し訳なさそうに肩を縮こませている。

成程、今朝の担当はあの二人だったのか。

奏は徐に立ち上がった。


こう見えて奏は料理が得意だった。


ケシズミ魚と味噌汁は手遅れだがおひたしと味なし粥なら何とか修正がききそうだ。




「まだ、おひたしとお粥に手をつけてない奴は勝手場に持ってこい。料理は得意だ。食えるようにしてやる。」




そう言って奏は広間を出て勝手場に向かった。



多くの隊士がその後勝手場につめかけたのは言うまでもない。


< 58 / 84 >

この作品をシェア

pagetop