【完】運命は罠と共に
愛の始まり
あれからすぐに私たち2人は移動した。


玄関先で待たせることも無く、部屋の中へと通すことが出来た自分を心の中で褒め称えていた。



「綺麗にしてるんだね。仕事もしてるのにすごいね」


「あんまり周り見ないでくださいよ」



褒められたのが嬉しくて、でも部屋の中をしっかり見られるのは恥ずかしい。



「ソファーにでも座っててください。田中さん何飲みますか?って言っても、私コーヒー飲めないのでコーヒーないんですよね。紅茶かハーブティかアイスなら麦茶がありますけど」



田中さんがさっきコーヒーを飲んでたのを思い出して、コーヒーを置いていなかったことを後悔した。


コーヒーも置いておくべきだった。



「何でも飲めるから大丈夫だよ。じゃあ紅茶もらおうかな。ハーブティーもあるってすごいね」


一緒にいるのが恥ずかしくて、そそくさとキッチンでお茶を淹れた。


まさかハーブティーのことを聞かれるとは思っていなかった。


自分投資にお金をかけている女性のことを、良く思わない男の人も多いって分かっているから。



田中さんはどっちかな?



「亜美の受け売りなんですよね。ハーブは女性の味方だ!って言って、よく一緒に買いに行ったりするんですよ」


美意識の高い亜美と一緒にいると、『綺麗になろうツアー』とか言ってよく出かけている。


これってダメなことかな?



「2人ともすごいね。そんなに気にする必要なさそうなのに。ちゃんと努力してるんだね」




努力してる。


少しでも綺麗でいるために努力していることが伝わった?


なんか嬉しい。




「女性はみんな気にしていると思いますけどね」


――コトり。


「はい、どうぞ」



淹れ終わった紅茶を、田中さんの前に置いた。



私が座る場所は……あそこしかないよね。



この部屋には、2人がけのソファーしかない。


だから、田中さんの隣に座るしかスペースはない。




田中さんとの間に少しだけ間を空けて、隣に座った。
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