竜王様のお約束
イチ
白の村は、今日も平和であった。


村人の間には笑い声が絶えず、田畑を耕す者、商いを営む者、演芸に磨きをかける者。


それぞれが思い思いに、生計をたてて暮らしていた。


「あっハク様・・・。
ハク様、見回りですかい?
いつも、ご苦労な事です。」


「ハク様!これどうぞ!
家で取れた桃です。
召し上がって下さい。」


農作業をしていた夫婦が、村の様子を見に来ていた村長を見つけて、嬉しそうに駆け寄って来た。


ハク様とは勿論、ハクリュウの事であり、3年前まで天界で現役の竜王をやっていた。


あの時の、冷酷無比な面影は今はなく、村人達から気さくに声をかけて貰えるような、慕われる村長であった。


ほとんど龍の能力を無くしたハクリュウは、自らリュウを名乗る事を止め、気ままな人間界での生活を楽しんでいる。


「ほぉ、旨そうだな。
馳走になろう。
して・・・村の様子に変わりはないか?」


相変わらずの物言いではあるが、白い豪奢な衣装をまとった村長は、以前とは全く真逆の柔和な瞳で、夫婦と短い談笑を交わし、その場を後にした。


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