久遠の花〜 the story of blood~
/4
/4





『――――起きて』





 誰かが、私に呼びかける。声がする方を見れば、そこからは明かりが射している。





『起きて。――そこは、危険だから』





 声のする方に、手を伸ばす。すると次第に、目の前が光に包まれていき――次に目にしたのは、暗い部屋。どこなのかと思い体を動かしてみれば、私は、大きなベッドに寝かされていた。

 目を凝らしせば、天井から布が垂れていて、とても豪華な作りをしている。


「ここ、って――?」


 起き上がると、私は体に違和感を覚えた。触れれば、服の質感が違う。立ち上がってみると――ベッド同様、豪華なドレスを身にまとっていた。





「――目が覚めたようですね」





 突然、やわらかな声が耳に入る。思わず身構える私に、怖がらせてすみませんと、誰かが近付いて来る。


「突然すみません。どうしても、あなたのお力を借りたかったものですから」


 そう言い、声の主は目の前に来るなり膝を付いた。


「お初にお目にかかります。私は、王華の長に仕えている者です」


 丁寧に挨拶をするその人は、私と変わらない年頃の少年に見えた。


「怯えないで下さい。あなたに危害を加えることは致しませんし、ここに、そういった者たちを入れることは致しませんから」


 淡い茶色の瞳で、少年はまっすぐ、私を見つめて言う。

 優しい雰囲気で話しかけてくれるから、怖い人じゃないのかと思い始めた私は、ようやく、少年に話しかけてみることにした。


「私を……どうするつもりですか?」

「しばらく、ここでお過ごし下さい。そして我らに――どうか、そのお力を」


 左手を握られたかと思えば、その手は少年の口元へ持っていかれ、そっと口付をされてしまった。
< 224 / 526 >

この作品をシェア

pagetop