似非恋愛 +えせらぶ+
フェーズ5

葛藤


 もうすぐ春だというのに、風がひどく冷たい金曜日。もう少し厚着をして来ればよかったと後悔しながら、私はある場所に来ていた。

 それはDyverCanyon(ダイバーキャニオン)、斗真と氷田君の務める会社だった。うちの会社と共同で開発を行っているとはいえ、同業他社でアウェイなものだから、酷く居心地が悪いと感じた。

 思えば、私が会いたいと言えばいつも斗真はうちの会社に来てくれていた。斗真も今の私のような気まずい思いをして待っていてくれたのだろうか。
 思い返していた私はそっとため息をついた。

 今日は、斗真に連絡をしていないうえ、金曜だ。会社の飲み会がある可能性が高い。もしかしたらすでに帰ってしまっているかもしれない。それでも、斗真の姿を一目見たかった。

 みあの話を聞いて、私は斗真と向き合わなければいけないと思ったのだ。そして、自分の気持ちとも……。

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