甘え下手
気まぐれサタン
「百瀬ー、ここレイアウト替えといて」

「はい、ただいま!」

「あれ? そんな重いの運んでんの? 参田(さんだ)は?」

「さぁ……。煙草休憩じゃないですかね」

「ったくしょーがねえなあ。アイツ帰ってきたらやらせといて」

「はーい」


とは言ったものの、参田さんは一度消えたら、いつ戻ってくるか分からない。

仕方なく私は、渡された仕様変更図を片手に一人で何とかレイアウトを変えようと試みることにした。


短大を卒業してすぐ、精密機器のメーカーに入社して、今年で四年目。


広報部に所属する私の仕事は、主に展示会などでお客さんに製品を紹介するイベントを担当すること。

一応今回の展示会は、大きな会場の一画を借りて、それなりに予算もかかってるから、たくさんのお客様に商品を見てもらわなければならない。


目玉は歯医者さんで使う3Dスキャナを搭載したCADシステムだ。

一台で何百万とする機械だから、丁重に扱わなければ。

なにせ壊したら、私の年収では弁償できない。


貴重な男手である参田さんは、仕事なんて人生の片手間という快楽主義な人で、上司の目が光らないこういった展示会では、全く働きぶりは期待できない。
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