密の味~一度あなたに触れてみたい~
彼氏がいるのに背中で…


「オ~ッス、順平」


駅に向かう道のりで。


朝から主任の大声が辺りに響く。


ったく。


いい年して。


朝から無駄に元気だよな。


「はよっす」


適当に返答し、俺は改めて主任の傍らにいる彼女に向き直った。


「はよ、凛さん」


「おはよう、順平君」


挨拶したのは主任の同棲相手、凛さんだ。


いつものように柔らかな笑顔で答えてくれる。


嬉しいけど、複雑な気分だった。


毎日こんなやりとりしてたけど、それも今日まで。


来週から主任は東京本社に移動になる。


それを機に2人は結婚し、凛さんも着いていくのだ。


家が近いから、こうしてよく顔を合わせてたけど。


それもなくなる。


来週から、もう会えねぇんだ――。


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