アンラッキーなあたし
人生これから
今日であたしはこの会社を去る。女の夢・寿退社でも、嬉しはずかしオメデタでもなく、派遣切りで…。

「お疲れ様でした。これからも頑張ってくださいね」

ハゲの内田は事務的にそう言い放った。

「お疲れ様ですぅ。恵梨菜、さみしいぃ」

恵梨菜はネイルをケアしながら、あたしに別れの言葉を伝えた。

そうそう、ここだけのはなしぃ」

爪磨きをぽいと放ると、恵梨菜は唇を尖らせ声を潜めた。

「ここだけの話しぃ、あなたの次に入る子、社長の姪ごさんなんですってぇ。短大出たての二十歳。きっと、ワガママで何もできない系ですよぉ。嫌ですよねぇ。ワンマン社長の会社って。それくらいなら、あなたのほうが全然マシっていうかぁ…」

恵梨菜は本当に嫌そうだった。

そりゃそうだろう。自分より若くて、しかも、社長の姪とくれば、やりずらいに決まっている。仕事だって押し付けられない。あたしはこれからやって来る子が、うんと恵梨菜を困らせてくれる事を期待した。
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