ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
chapter 6
「それで?」
ウェスターフィールド邸の書斎に入るなり、彼のグレーの双眸が苛立たしげに細められた。
「たかが十九歳のうら若きお嬢さん一人を相手に、何をいつまでもてこずっているんです? あなたらしくもないですね」
「いつも貴婦人方と浮名を流しているお前には、説明したって到底わからないだろうさ」
ため息まじりにエヴァンが呟く。ふん、と言うようにカーターは鼻を鳴らした。
「わからないといえば、そもそもたった一人に、なぜそこまで執着されるのか、わたしにはさっぱりわからないですが」
お前はそうだろうとも。深く頷くと、だから何が原因なんですか? と押し問答が続く。
それがわかればこんなに苦労はしていないさ、と頭を抱えたくなる。