ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
chapter 7

 それから約一時間後、二人を乗せた馬車はシークエンドの牧師館を出発し東へ向かった。

 エヴァンはウォリス牧師に挨拶する間も、ローズがまた逃げ出すのではないかと心配するように、手をきつく握ったまま離さなかった。

 牧師がやっと納得できたという顔で、二人を祝福し送り出してくれる。


「どこへ行くの?」

 馬車が街道三つ目の村を通り過ぎていく。

 それまで黙って外を見ていたローズも不安を感じ、目の前に座っている子爵に厳しい目を向けた。

 話し合おうと言ったのは彼なのに、ビロード張りの座席に座って黙ってこちらを眺めているばかりだ。

 トランクまで持ってこられては、もうシークエンドに戻ることもできない。

 これでは話し合った後、また一から職探しになりそうだ、とローズはひどく落胆していた。
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