竜王様のお約束
ロク
コウリュウは今の今まで、一度たりとも忘れた事などない、妹の愛らしい笑顔を思い浮かべていた。


その安心しきって、寄り添う仕草を・・・。

その柔らかく波打つ、茶色い髪を・・・。

その純真無垢に澄んだ、琥珀色の瞳を・・・。


コハクとの、兄と妹の枠を越えた想いは、あまりに自然な感情すぎて、いつからそんな関係になっていたのかさえ、当の本人達にも分からなかった。


人間だったら、抑制がかかる感情であろう。
なにせ、兄と妹の禁断の恋路なのだ。


しかしここは、天界にして龍神が住まう場所。


人間とは、何もかもの感覚が違うのは、然りである。



コハクを失って、コウリュウが長年持ち続けていた喪失感は、今までハクリュウにぶつけられる事はなかった。


ひたすらに自分の想いを胸に秘め、淡々と優秀な竜王の参謀として接してきた。


そのコウリュウの想いが真実を聞いた今、目の前にいるキリュウへと、一気に吐き出されようとしている。
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